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高級ブランド オンラインで商品を注文し無料で返品する中国のインフルエンサー

インスタ映え写真だけ撮って返品!高級ブランドを悩ます中国人「爆買い」の終焉

Shuli Ren

 

ラグジュアリーブランドの景気減退

世界最強のラグジュアリーブランドコングロマリット、LVMH モエ・ヘネシールイ・ヴィトンでさえ、消費の冷え込みを感じているようだ。

その変化は、“”から起きているという。

パリに本社を置くルイ・ヴィトンディオールのオーナーは、第2四半期の売上が1%増加したと報告した。パンデミック初期を除けば、2009年の世界金融危機以降、最低の成長率だ。

しかも、営業利益率は低下した。その主たる原因は、マイナス金利が名目上終了してもなお弱い日本円にあると考えられている。

ラグジュアリーブランドの主な購買層である裕福な中国人は、為替の有利な日本で買い物を楽しみ日本の売上を57%も押し上げたが、中国国内では不況が起きていたのである。

カルティエやヴァンクリーフ&アーペルを傘下にもつスイスのRichemontなど、その他のラグジュアリーブランドも日本での異常な成長を報じている。

日本で爆売れ しかし利益は伸びず

しかし、ヨーロッパのファッションブランドにとって、日本市場の好調は喜ばしいものではない。

コスト基盤はヨーロッパの通貨となるため、円建てで収益があがっても、売上高と収益性がともに下がってしまうからだ。

日本での販売価格は確かに低い。Bernstein Researchによれば、ティファニーやブルガリ、シャネルは日本なら中国の約8割程度の価格で購入できる。

中国人は世界のラグジュアリーマーケットで26%のシェアをもっているが、そのうち3分の1以上は海外で消費されているという。

こうした企業は中国国内市場に多くの投資を行っているものの、消費が低迷しているため、二重の打撃を受けているのだ。

加速する中国人の「日本人化」

ただし、ラグジュアリーブランドが抱える本当の問題は、円安ではない。

もっと懸念すべきなのは、日本化だ。中国の消費者が1990年代の日本人のように振る舞いはじめているのである。

中国経済が住宅市場の崩壊を経験するなかで、中国人は辛抱強く合理的な消費者になりつつある。

1980年代のバブル崩壊後の東京を思い出してみてほしい。

アメリカはおろかヨーロッパさえも突き放して成長しているかのように見えたバブル期のように、日本人は高級ブランドで全身を着飾れなくなっていった。

人々は謙虚になっていき、費用に見合う価値を見定めるようになった。その結果、ローカルブランドの成長が進んだ。

1998年、ユニクロパタゴニアよりも遥かに安価なフリースを発売し、一躍注目されるようになった。

安いブランドを混ぜるほうがクール

ファッショニスタたちも、高級ブランドと安価な商品を混ぜて楽しむようになった。ユニクロ無印良品の安価な服を、何年も使える高級ハンドバッグと合わせて使うようになったのである。JPモルガン・チェースによれば、輸入ファッション販売額に占めるハンドバッグの割合は1994年の26%から2004年には43%まで上昇したという。

こうしたスタイリングがいま、中国人にも受け入れられている。

若い裕福な女性たちの間で人気のSNSプラットフォーム「小紅書(Xiaohongshu)」では、お金もちでなくても100万ドルかけているように見える日本人の服装についてインフルエンサーたちがレクチャーしている。

そのポイントは、ヘアスタイルとスキンケア、そしてディテールにある。

派手なヴェルサーチのドレスをシャネルのハンドブックと合わせるようなスタイルとは正反対だ。こうしたファッションは、センスのない裕福な年配女性を指す軽蔑的なスラング「大媽(ダーマー)」に見えるだけだという。

インスタ映え写真だけ撮って返品

SNSとEコマースは「価格に見合う価値」という概念を新しいレベルへ押し上げてしまったのだ。

もっとも、ヨーロッパのファッションブランドは依然として経済的成功の象徴だ。だからインフルエンサーやファッショニスタたちはオンラインで商品を注文し、インスタ映えする写真や夜のパーティに向けた装いだけを見せびらかし、無料で返品するようになった。

リシュモンの高級ECプラットフォーム「Yoox Net-A-Porter」は、高級品の返品が急増したため、最近中国から撤退してしまった。

バーバリーヴェルサーチのように、プライベートセールやアウトレットなどで売れ残り商品を売っているブランドは、中国の消費者に定価で商品を購入してもらいづらいだろう。

適正価格の商品で数百万人のファンと900以上の店舗を中国本土で獲得したユニクロでさえ、賢いインフルエンサーの猛攻撃から逃れることはできない。

ユニクロの親会社、ファーストリテイリングは5月までの3カ月で大幅な利益減を経験し、消費者がより手頃な代替品に切り替えていることに気づかされた。

なぜそんなことが起きたのか? 消費者は、かつて頻繁に行われていたユニクロのセールが消えつつあると不満を漏らしているようだ。そして彼らは、ほかの場所で似たような安い商品を共有するようになった。

中国人が見つけ出す独自の感性

ラグジュアリーブランド業界の幹部たちは、中国の不景気や習近平による享楽的なライフスタイルの取り締まり、急激な為替変動が売上に与える影響についてよく愚痴っている。

残念ながら、こうした不平不満は、いまやグッチのスニーカーと同じくらい退屈なものだ。

むしろ、中国人は20年間にわたってヨーロッパの高級品を買いつづけてきたのであり、彼らに消費を促すハードルは上がっている。

かつての日本人と同じように、中国の消費者たちも自分なりの感覚と感性を見つけ出したのである。

 

 

引用記事:

インスタ映え写真だけ撮って返品!高級ブランドを悩ます中国人「爆買い」の終焉 (Bloomberg)