TABACO ROAD

サザン情報を中心につづる

神奈川県 葉山 元ミス日本 伊藤千桃さん70代の心豊かな暮らし方

2024年ゆうゆうtimeで大人気だった記事をリバイバル! ※記事の初出は2024年1月です。
↓↓
神奈川県の葉山で土地に根ざし、質素で豊かに暮らす伊藤千桃さん。 飾らず、見栄を張ることなく、常にありのまま。 自分の物差しをもち、「お金から自由になる」暮らし方を伺いました。

 

伊藤千桃さんの暮らし方「小麦粉さえあれば」

本当に必要なものを見極める物差しをもつ

葉山の山のふもとで暮らす伊藤千桃さんは、庭で採れる自然の恵みを料理し、お茶も化粧水も手作り。
「買うのはお肉くらいです。なぜなら、お金がないから」と笑う。

「昔からお金に余裕があったことは一度もありません。だけれど素晴らしい着物に出合い購入してしまった、ということは何度もありました」

やみくもに生活すべてを節約するのは寂しいし、気持ちが貧しくなる。使うところは使う、というのが伊藤さんの流儀だ。

「ときには上を見ておくことも必要と思って。本物を知ったうえで、取捨選択できる自分をもつことが大切だから。子どもや孫たちには、若いうちはお金を贅沢に使いなさいと言っています。自分の価値観は、多くのことを経験しないとつくれないでしょ。自分の物差しをしっかりもてば、こわいものはありません」

車は維持費がかかるので、1台手放して自転車に。坂道の多い逗子までのサイクリングを、健康と節約がかなう一石二鳥の娯楽と言う。お金がないこともむしろ愉しそうだ。

 

夏みかんは、実だけではなく、皮もマーマレードにして余すところなくいた だく。クレープのソースに最適。

辛い経験も人生の財産に

蓄えがないと、この先も暮らしていけるか不安が尽きない、となりがちだ。お金に縛られずに、心豊かに暮らす術は、いつどんなふうに身につけていったのだろうか。

「今だからこそ、こんなに『あっけらかん』としていますが(笑)、40年近く前には夫との関係がうまくいかず、うつのような状態になったことも。離婚後は、離れを人に貸し、接客を覚えて自宅でレストラン『桃花源』を始め、どうにか暮らしてきました。毎日慌ただしくて、とにかく必死で追い詰められていた。息子の反抗期もありましたし大変でしたね」

どうしてこうなったんだろうか…男運もないし、お金にも縁がない、と悩んだ時期も。それがある時期に、プツンとふっ切れたのだという。

「落ち込んでいた頃、図書館でたまたま借りた本の中に“ある日、足元に咲いていた小さな花に気づき、なんて可愛いんだろう、と思った。この花に気づくという幸せを、なぜ今まで忘れていたのだろうか”といった記述があったんです。これを読んだ後、私は思わず大きくうなずいてしまいました。目が覚めたんです。身近なもの、ひとつひとつに幸せを感じ、満ち足りることを忘れていた、ずっと何も見えていなかったんだと」
 

それからは、まわりの自然に目が行くようになり、毎日が愉しくて仕方なくなった。庭いじりをしていてバッタと目が合ったり、草木の芽吹きに季節の巡りを感じたり。

辛い経験を重ねてきた今だからこそ、気づいたことも多い。
「人は苦労するのも必要。お金がなかったおかげで、まわりの自然の豊かさに気づき、恩恵を余すところなくいただいて暮らす知恵がつきました」

春のふきのとう、夏の山椒、秋の銀杏、冬の金柑など、滋味深い風味はどれも季節のご馳 走。庭仕事の際に採取し、食卓へ。

あるもので工夫し無駄を省くことを愉しむ

ダイニングのテーブルには立派な夏みかんが山のように盛られていた。
「たくさん採れたので、今日はゼリーとピールを作ってみました。夏みかんの皮のゆで汁は、床磨きに使える天然のワックスになるんですよ」

伊藤さんが、山菜や野草などのまわりにある植物に関心をもち始めたのは、子どもたちが巣立って自分の時間がもてるようになった頃。

「図書館に通って植物について書かれた本を読んでいるうちに、美容や食事、健康法などを試してみたくなって。びわドクダミの葉でお茶を作ったり、ユキノシタで化粧水を作ったり。四季折々の草木で試作を重ねるうちに、作るものがどんどん増えて、今に至ります」

葉山の自然で育った生命力の強い薬草や果実を日本酒に漬けブレンドした自家製の化粧水。

夏みかんさえあれば、おやつの時間も充実

皮も実も余すところなく使える夏みかん。しぼり汁はサラダドレッシングに加えることも。

清涼感のある見た目とお味【夏みかんゼリー】

夏みかんは実をほぐし、スプーンで粗くつぶす。粉寒天はダマやムラになりやすいので水に加えて中火でとかし、火を止め、夏みかんを加えて冷やし固める。酸味の加減に応じて砂糖はお好みで。

チョコレートをかけてギフトにも【夏みかんピール】

表面をたわしでこすり洗いしてからむいた皮を、3回ゆでこぼして一晩水に浸けておく。翌日、再度ゆでこぼして砂糖を加え、汁けがなくなるまで煮る。網の上に並べ、乾いたらグラニュー糖をまぶす。

夏みかんの皮でお掃除

夏みかんの皮をゆでこぼした汁は、捨てずにバケツに移してとっておき、床磨きに使用。皮から出る天然油のリモネンという成分が床の汚れを落とし、つやも出てピカピカに。ワックス代わりになり、柑橘系の爽やかな香りに癒やされます。

【1】夏みかんピール(35ページ)を作る際、3回ゆでこぼす皮のゆで汁をバケツに移しとり、冷ます。

【2】 ゆで汁に雑巾をつけて絞り、床をふき掃除。市販のワックスとは違い、天然成分なのでペットたちがなめても害がなく安心。

※この記事は「ゆうゆう」2020年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

 

引用記事:

「お金がないから、買うのはお肉くらいです」元ミス日本 伊藤千桃さん70代の心豊かな暮らし方【2024年お金部門TOP10】 | ゆうゆうtime|ページ 2/3