「映画グランメゾン・パリ」は、人気ドラマ「グランメゾン東京」(TBS系)の映画化。主人公は型破りだが腕は確かな仏料理のシェフ、尾花夏樹。木村拓哉(52)の近年の当たり役だ。映画は、仏パリで国籍や伝統などの壁にぶつかっても前進をやめない尾花の熱い姿を描く。「全スタッフ、全キャストの宝物になった」。木村は愛情を込めて、この映画をそう表現する。
┗仏語のせりふも多く台本が横書きで製本され、「頭がバグった」と笑う木村拓哉(石井健撮影)
「グランメゾン東京」は、令和元年に「日曜劇場」枠で放送された。
パリの著名シェフだった尾花は、ある事件で仏料理界を追われる。だが、偶然知り合ったシェフの早見倫子(鈴木京香)と東京でレストラン「グランメゾン東京」を開き、昔の仲間たちと切磋琢磨しながらレストラン格付け本「ミシュラン」の三つ星獲得のため邁進する。
日曜劇場らしい、熱血な展開だった。料理にストイックである分、人当たりがきつい尾花。このぶっきらぼうな男臭さは、今や木村にしか表現できないかもしれない。
ドラマから5年と映画化は、やや間が空いた。
「ドラマは確かに句読点の句点を打ちましたが、尾花も倫子も自身の可能性を追い求め続けているはずで、本来、もっと早く再結集してもよかった」
だが、放送終了後、新型コロナウイルスの感染が拡大した。
「コロナで多くの飲食業界の方たちが苦渋の決断を迫られた。飲食の世界を描くグランメゾンなら、その課題をないがしろにはできなかった」
タイミングを慎重に見極めた。その結果、まず29日放送のスペシャルドラマ「グランメゾン東京」(午後9時)で、尾花たちのパンデミックとの闘いを描き、30日公開のこの映画で、パリで三つ星に挑む姿へと続けることにした。
ドラマから引き続いて脚本は黒岩勉、監督は塚原あゆ子。それぞれ「キングダム」シリーズ、「ラストマイル」など銀幕の世界でも売れっ子だ。
映画の主題は明確。「仏料理は常に異文化を取り入れながら進化する」だ。尾花のレストランには韓国人のリック・ユアン(オク・テギョン)ら多国籍のスタッフが働いている。差別や分断など今日的な課題を取り込みながら、革新する者と伝統を守る者と、それぞれの苦悩と和解を描く。
「この映画はスタッフ、キャストの宝物になったのではないかと思っています」と木村は胸を張る。
「僕らは、その宝物を、額やケースには入れず、ここに置いておくので、皆で触りに来てほしい。料理や風景の写真と同じように、この映画を皆のコミュニケーションツールにしてもらえたら」(石井健)
30日から全国公開。1時間57分。バリアフリー上映対応。
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