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松本人志の替えは利かないんだろうな 業界もその存在に甘えていた。

ダウンタウン松本人志が、「週刊文春」との裁判に注力するため、テレビから姿を消した。
30年以上、バラエティ界のトップに君臨し続けてきた松本の“不在”がテレビ業界に与える影響は大きく、
各番組は千鳥、バカリズムなど実力派芸人を代役MCに
 
 
てるなど、対応策に追われている。

 みんかぶプレミアム特集「芸能界再編」全七回のラストは、東京大学法学部卒業の芸人・大島育宙氏(XXCLUB)が再び登場。前回は「テレビ業界の怠慢」について話が及んだが、今回は「今後のテレビ番組の方向性」について触れる。

松本人志は「練習をしない」

 今回の松本さんの報道がきっかけで、キャスティングの基準はもちろん変わるでしょう。

過去の発言や何か傷がある人がもし今数字が取れる人だったとしても「いいじゃん」とはならなくなっていくと思います。

 となると、今後は「クリーンな芸能人」が使われていくわけですが、それに伴い“ガチ感”も喪失する。僕が思うに、松本さんがいる番組って、何か“揺らぎ”のようなものが生まれていて、それが唯一無二だった。

良くも悪くも、「準備」をしない人なので、笑いが起こるのは即興スタイルでした。それがバラエティにおける凄みでも弱点でもあった。

 ここ1ヶ月ぐらい、僕は松本さんが作ってきたコントをさかのぼって見てきたんですけど、改めてやはり「ほぼ練習していない」っていうことがわかりました。

アドリブで、東野さんとか板尾さんとかが、突発的な何か言って、松本さんが吹き出してしまう。

そしてコントの空気感ができ、視聴者も引き込まれる。

松本さんが、映画に向いてなかったのは、台本もあって、練習もしなきゃいけないという、決められたやり方が苦手だったからなのかなと思うんです。

松本関連の話題にズバズバ切り込んでいた意外な元芸人

 松本さんに代わって誰が役割を担うのかですが、そんな“ガチ感”を活かして爆笑を取る人は「いない」と思っています。対抗馬としてよく挙げられるのが爆笑問題・太田さんですが、毎回思ったことを我慢できずに言っちゃう芸風が、ある意味ファンからの「信頼」になっていて、今回も松本さんいじりを先陣切って行っていました。

ただ、僕のような直属の後輩でもある“太田ウォッチャー”からすると、本当に通常営業だなという感じで、これで改めて評価が上がるのも、ご本人のためにならないような気がします。

 話は脱線しますが、松本さんに言及していた芸人界隈で、元りあるキッズ長田融季さんが、目立っていたのは興味深かったです。

例えば2024年2月3・10日合併号の週刊現代で、松本さんについて「松本さんに気に入られることが、テレビ出演への近道だった」とか、すごいリアリティのあることを喋っていたんです。

 YouTubeチャンネルの「Arc Times」っていう、東京新聞の望月衣塑子記者などがやっている結構お堅いところでも長田さんは話していました。

もともとM-1の決勝に行くぐらい実力があった人なので、普段はシリアスな空気のチャンネルなのに、ちゃんと笑いも取って、かつリアルなナラティブも届けていて。

芸人界隈で「株を上げた」とは言いたくはないですけど、臆することなく発信する人がもっといても良いんじゃないかなとは思った事象です。

“異物感”がありながら権威になる人物はいない

 話を戻すと、“ガチ感”のある笑いを届けてくれるという意味では、有吉(弘行)さんも連想されるところですよね。

ですが、有吉さんは、近年すごく“ちゃんとした仕事”をこなすようになりました。

失うものがなかった一発屋芸人時代は、先輩後輩を無視して、アクセルを踏みまくっていたけど、今や天下人ですから。冠番組をはじめCMに大量に出て、昨年は紅白の司会もやって「裏方にも誠実で優しいんだろうな」みたいなイメージが現在はついてしまっている。

フェーズが完全に変わっちゃいましたよね。

 そう考えると、ずっと“異物感”がありながら権威になっていく人という意味では松本さんとダウンタウンが圧倒的だったし、そういう意味では替えは利かないんだろうなと。

だから、前回の記事では批判しましたが、業界がその存在に甘えていたのも理由は分かります。

テレビは「知名度を上げる装置」として使われていく

 松本さんが今回この報道を食らって、実質引退状態まで追い込まれたのは、そもそも時代の流れのせいもありますよね。

20年前だったら、「なんやそれ」と言って、そのまま出続けても良かったし、世間も流してきたことかもしれない。それができない時代になってしまったし、これをきっかけに、関連の報道ひとつで、テレビ出演が一切認められないという空気の加速は進みますよね。

 松本さんと(島田)紳助さんがいなくなったときを並列に語る人も多いですけど、その頃とは状況が全然違う。先ほど話したクリーンさが求められる時代になったし、メディア自体が分権化していっている。

江頭(2:50)さんみたいなハチャメチャな芸風の人、(石橋)貴明さんのようなネームバリューのある人は、YouTubeチャンネルが一瞬で200万人ぐらいの登録者になって、“ネットの人”になっていることを考えると、松本さんが今後もし復帰することがあっても、テレビという舞台に重きを置かないのではないでしょうか。

 未成年へのわいせつ騒動(示談となり不起訴処分)があった極楽とんぼの山本さんは事件から10年近く経って復帰しましたけど、結局現在もテレビはほとんど出られていないし、そもそもYouTubeが大人気になって、活動を完全にシフトしました。

 なので、テレビは今後「憧れの媒体」にはならず、ますます「知名度を上げる装置」としてのみ機能していくのかなと思います。フワちゃんとか、EXITさんのように、ガッと一気に出まくって、CMにアサインされて知名度とお金を得て、本当に自分がやりたいYouTubeや事業を立ち上げる。そうしたセカンドキャリア前提の売れ方が今以上に当たり前になっていくんじゃないでしょうか。

攻めた番組は突発的にしかできなくなる

 残されたテレビ、お笑い番組は、バカリズムさんなどがやっているお笑い要素が濃いドラマのように、作品性が高いものが重視されていくんじゃないかと思っています。ウッチャンナンチャンの内村さんがやっている一連のコント番組もそれに近い側面があります。

 一方でもし過激なことをやりたいのであれば、『水曜日のダウンタウン』で知名度を上げたプロデューサーの藤井健太郎さんがDMM TVで『大脱出』を作ってるように、他の媒体でやりたいことを、自由にお金を使ってやるのではないでしょうか。これも前述の芸能人の売れ方と同じですよね。

 テレビ視聴者の年齢層がどんどん高年齢化して、今の50代の人たちは80代になるまでテレビを見続けると思うし、その人口割合は増えていくので、突発的に攻めた番組ができる可能性とかはあるとは思うんですけど、長くは続けられませんよね。カラオケする番組、ライトなドッキリ番組とか、ゲーム性のある番組、それがメインを占めていくのかなと思います。それが「テレビがつまらなくなる」ということなんだとしたら、まあそうなんでしょうね、と思いますし、それでいいと思います。

 

引用記事:

松本人志に気に入られることはテレビ出演への近道だったのか…東大卒芸人・大島育宙が語るポスト松本候補「もう“異物感”と権威を持つ人物は現れない」 (みんかぶプレミアム)