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浅野忠信 「SHOGUN 将軍」助演男優賞 英語スピーチが絶賛!

 

第82回ゴールデン・グローブ賞助演男優賞に輝いた俳優・浅野忠信さん Photo:Matt Winkelmeyer/gettyimages

俳優・浅野忠信さんの英語スピーチが絶賛されています。第82回ゴールデン・グローブ賞にて『SHOGUN 将軍』が4冠を達成し、浅野さんは助演男優賞に輝きました。米ビバリーヒルズで行われた授賞式で成功したポイントを、英語コーチングスクール経営の専門家が解説します。(トライズ 三木雄信)

なぜ浅野忠信さんのスピーチがビバリーヒルズで大成功したのか

 

 日本時間の1月6日午前、第82回ゴールデン・グローブ賞にて『SHOGUN 将軍』がテレビドラマ部門の作品賞を受賞しました。この作品は真田広之さんがプロデュースと主演を務めたもので、真田さんが主演男優賞、浅野忠信さんが助演男優賞、アンナ・サワイさんが主演女優賞を受賞し、見事4冠を達成しました。

 この授賞式での浅野忠信さんの英語スピーチが、SNSを中心に絶賛され話題です。英語コーチングスクールを経営する筆者が見ても大成功だったと思いますし、感動しました。何が成功のポイントだったのか、スピーチの分析をしてみましょう。

ゴールデン・グローブ賞公式動画:https://www.youtube.com/watch?v=4IXLNVXGJT4

youtu.be

まず、スピーチの内容、発言を文字起こしします。

Wao, maybe you don't know me.
(トロフィーを片手に壇上に立ち)ワォ、多分皆さんは私をご存じないでしょう。

So, I'm an actor from Japan, and my name is Tadanobu Asano.
で、私は日本から来た俳優で、名前は浅野忠信です。

Wao, ha ha.

(トロフィーを片手で掲げながら笑顔で)ワォ、ハ、ハ。

Thank you so much. Thank you so much.
どうもありがとうございます、ありがとう。

So, I'm during the filming.
で、私は今撮影中でして。

So, I have to come back Tokyo tonight.
今晩、東京に戻らなければなりません。

Tomorrow morning, I go to shooting again.
明日の朝からまた撮影なんです。

But this is a very big present for me.
(トロフィーを両手で持ち直し掲げながら)しかし、これは私にとって大きなプレゼントです。

Thank you so much.
どうもありがとう。

Thank you, Shogun team.
ありがとう、将軍チーム。

Thank you everybody.
皆さん、ありがとう。

I’m very happy.
私は幸せです。

Thank you.
ありがとう。

 時間にすると40秒程度の短いスピーチでしたが、動画を見れば一目瞭然、受賞会場は大いに盛り上がり盛大な拍手に包まれました。また、動画コメントも非常に好意的なものばかりです。一例として下記に引用します。

One of the greatest actors of Asian cinematography being so humble about himself and telling that maybe nobody knows who he is. True legend!

アジア映画界で最も偉大な俳優の一人が、自分自身についてこんなにも謙虚で、「もしかしたら誰も自分のことを知らないかもしれない」と語るなんて。本物の伝説だ!

Top tier acceptance speech! Well deserved, he was my favorite character on Shogun.
最高レベルの受賞スピーチ!当然だ。彼は『SHOGUN』で私のお気に入りの登場人物でした。

Seriously, his speech was the most fun and motivating of all, it's great and endearing.
本当に、彼のスピーチは最も楽しく、モチベーションを与えてくれるものでした。素晴らしくて愛らしいですね。

 なぜ、これほどまでに絶賛されたのでしょうか?大成功の理由は複数あります。

「外来語スピーチ」でも人々を感動させたポイントは?

┗Photo:Rich Polk/GG2025/gettyimages

 まず、難しい英語は全く使っていません。単語も文法も、日本でいう中学生レベルです。というか、英語として単語を使っていないといってもいいでしょう。スピーチに出てくる単語は、外来語として日本語で使われている単語ばかりです。

 また、発音についてもいわゆるカタカナ英語で、これもある意味、日本人らしいといっていいでしょう。総じて、「英語スピーチ」というより「外来語スピーチ」とすらいっても過言ではありません。

 浅野さんは優秀な俳優ですから、英語のセリフとしてもっと完璧なスピーチをすることもできたでしょう。10年以上前からハリウッド映画に何作も出演しています。それに、今回の賞のノミネートは昨年12月に行われたもの。つまり、浅野さんは事前に準備して「英語スピーチ」もできたはずなのです。

しかし、あえてしなかったのでしょう。そして、今回の中学生レベルの外来語スピーチで浅野さんの気持ちは十分に伝わったと思います。

 浅野さんは、アメリカ人風の自信満々な立ち振る舞いではなく、やや猫背な姿勢でした。発言内容も相まって、いわゆる日本人らしい謙虚な雰囲気でした。

 一方で感情表現については「Wao」など感嘆符を使い、大きな声ではっきりゆっくり、堂々とカタカナ英語で発音しました。これも、現地の会場を沸かせたポイントの一つでしょう。

英語が完璧に話せるかどうかは世界で活躍することには関係ない

 

 ここから先は筆者の想像に過ぎませんが、浅野さんはこのようなスピーチで伝えたかったことがあったのではないでしょうか? それは、「英語力とは関係なく、日本人俳優は世界で通用する、自信を持ってほしい」といったメッセージです。

 そもそも『SHOGUN 将軍』は、米国で制作されたドラマですが、劇中のセリフの約7割が日本語です。それでも、「Disney+(ディズニープラス)」で世界配信され、英語をメーン言語としない人々も数多く視聴し、高い評価を受けました。

 また、ゴールデン・グローブ賞投票権を持つ人も、近年はアメリカ人に限らず多様化しているといわれています。そうした背景を踏まえると、俳優業は英語ができなければ世界では通用しないとか、英語ができるのが大前提というのは、やや時代遅れな気もします。

 実際に今回の日本人俳優の授賞は、「英語が完璧に話せるかどうかは、俳優として世界で活躍することには関係ない」ことを証明して見せました。

 浅野さんは受賞後のインタビューで(日本語で)、「今後の日本人俳優の世界での活躍を期待する」と語っています。また、真田さんも「SHOGUNが言葉の壁を壊した。大きな門がアジアの国々に開けた。その土壌に次からまた、クルーもキャストも橋を渡って来られる状況が作れた。可能性は大きく広がった」とコメントしています。

こうしたメッセージは、全ての日本人にとって意味があることだと思います。日本人の個々の能力は高く、世界に通用するものです。しかし、英語ができないがゆえに日本に閉じこもりがちです。

 自分の専門分野や強みがあれば、自信を持って世界に出るべきです。出た後に英語をマスターして、さらに高みを目指せばいいのです。そうした意味でも、浅野さんも真田さんも全ての日本人のロールモデルとなり得るでしょう。

 お二人は、ゴールデン・グローブ賞の授賞式から、日本に向けて共有したい「志」のようなものを訴えかけていたのかもしれません。少々大げさかもしれませんが、そうしたことを強く感じさせるスピーチでした。

 

引用記事:

浅野忠信さん受賞スピーチが「カタカナ英語」でも世界から絶賛されたワケ【専門家が解説】 | 三木雄信の快刀乱麻を断つ | ダイヤモンド・オンライン