10秒要点チェック
- リーマンショックで危機、スタバCEO
が頼ったのは故スティーブ・ジョブズ - ジョブズが「歩きミーティング」中、衝撃の一言「経営陣をみんな首に!」
- すぐに行動しなかったシュルツに、6カ月以上も時間を無駄にしたと指摘
3度もCEOを務めたスタバの顔
2008年、米アップルが当時本社にしていたアップル・キャンパスの中庭。共同創業者スティーブ・ジョブズは目の前にいるハワード・シュルツに向かって「経営陣をみんな首にしてしまえばいい!」と叫んだ。
シュルツは何十年にもわたり、米シアトルを本拠地にするコーヒーチェーン大手スターバックスックスの顔として君臨してきた。3度も同社の最高経営責任者(CEO)を務めたのだ。
1度目は1987年。シュルツは地元投資家と組み、スターバックスの店舗と商標を買い取った。それから急拡大路線に突き進み、2000年になってCEOを退任。チーフストラテジストとして海外市場の開拓に専念することにしたのだ。
2度目は2008~18年、3度目は2022~23年だった。
2度目と3度目は重大危機のタイミングと一致する。前者はリーマンショック後の経済危機、後者は新型コロナウイルスの感染爆発。どちらのケースでもスターバックスは経営立て直しに向けて助っ人を必要としていた。
リーマンショック時にジョブズと出会う
シュルツはスターバックスを何度も危機から救った中興の祖である。
同社が株式時価総額換算で920億ドル(約14兆5千億円)以上のブランド価値を維持するうえでも不可欠の存在だ。
それでも一人で何でもできるわけではなく、時に外部の有力経営者に頼ることもある。
一例は2008年のリーマンショック時だ。スターバックスのCEOに復帰して、取締役会の再構築をめぐって頭を悩ませていた。そんな状況下で初めてジョブズを紹介され、アドバイスを求めた。
今年6月上旬、シュルツは米ポッドキャスト番組「アクワイアード」に出演し、ジョブズとの出会いについて振り返っている。
「当時スターバックスはアップルとミーティングを予定していました。モバイル注文やモバイル決済に絡んで。ミーティングに先立ち私はスティーブと電話でつながり、初めて彼と会話しました」
電話口でスターバックスの内情について伝えたところ、アップルの本社に来て話さないかと誘われたという。
アップル本社で「歩きミーティング」
ジョブズの誘いに従い、シュルツはアップルが本社を構えるカリフォルニア州クパチーノへ飛び立った。
当時のアップル本社は現在の円盤型アップル・パークではなく、「インフィニットループ」として知られるアップル・キャンパスに位置していた。卵型の中庭を囲む6棟のビルで構成されていた。
ジョブズは「歩きミーティング」好きで知られていた。アップル・キャンパス内の中庭を散策しながら会話するのである(現在のCEOティム・クックもアップル・パーク内を散策することで知られている)。
「スティーブはビルの周辺を歩き回るのが大好きでした。だから私を出迎えると一緒に外に出て、中庭を散歩したんです」
ジョブズから衝撃のアドバイス
歩きミーティング中にスターバックスの問題をいろいろ聞かされたジョブズ。立ち止まって、シュルツの目を見つめながらこう言い放ったという。
「あなたがやらなければならないことははっきりしています。シアトルに戻って経営陣を全員解雇するんです」
シュルツは冗談だと思い、言い返した。
「今何て言いました? みんな首にするって?」
「その通り。経営陣をみんな首にしてしまえばいい!」
ジョブズはシュルツの面前で叫んでいるかのようだった。
「少なくとも僕ならそのようにしますよ」
「ちょっと待って、スティーブ。それはやり過ぎ。みんな首になったら、一体誰が仕事をするというんですか?」
「気にしなくても大丈夫。どうせ6カ月後か9カ月後には全員いなくなっているから」
見事に的中したジョブズの予言
シュルツによれば、ジョブズの予言は見事に的中した。法務責任者を除いて経営幹部全員が会社を去ったのだという。
その後、シュルツはジョブズと再会した。何かのイベントに呼ばれて壇上で一緒になり、歩きミーティングについて振り返った。
「スティーブ、あなたは正しかった。予言通りに経営幹部が一斉にいなくなりました」
ジョブズは次のように応じたという。
「6カ月──あるいは9カ月──も問題を先送りしていたというわけですね。もっと早く行動していればいろんなことをやれたはずなのに……」
「カフェラテ」の商標権で大失敗
全世界で3万2千店舗以上を展開するスターバックス。これまでに与えられたいくつものチャンスを最大限に生かし、世界最大のコーヒーチェーンに成長した。
とはいっても間違いも犯してきた。シュルツが最も後悔している判断ミスの一つは、「カフェラテ」というネーミングについて商標権を取得していなかったということだ(アメリカでは「カフェラテ」は「ラテ」と省略されることが多い)。
一言で言えばエスプレッソにミルクを加えたカフェラテ。起源をたどると17世紀のヨーロッパにたどり着くものの、アメリカでは目新しい飲み物として1970年代に入って注目され始めた。スターバックスのおかげで。
「カフェラテをアメリカで広めたのはわれわれです。それなのに商標権を取得しなかった……ちゃんとリサーチしていなかったからですね。その反省もあり、後にフラペチーノを投入したときにはちゃんと商標権を取りましたよ」
引用記事:
ジョブズから「経営陣をみんなクビに!」と助言をもらったスタバCEOが後悔していること (Fortune) (smartnews.com)