そばに居た大事なひとが、例えば急にいなくなったこと、
そんな思いをしたことがありますか。
それは大人になっても、そんな思いをしたことがないひともいて
子供にどう教えるか、戸惑う。
大事な人がいなくなって、
悲しくても、つらくても、いつか眠くなって寝てしまう。
悲しい夢に起こされて、現実をまた知って、悲しくてまた泣く。
そのうち疲れて泣くことを休憩すると、お腹がすいてきて、ご飯を食べる。
少しだけ外に出てみると、いろいろな音や色が入ってきて
思わず空を見たら、青くてきれいだった。
このクマさんみたいに、いずれ小さな出会いを重ねていく。
たくさん泣いたら、お腹がすくんだよ。
それが原点、子供に伝えられること。
水季が海に読み聞かせていた絵本の「くまとやまねこ」(湯本香樹実・文/酒井駒子・絵)は、友だちをなくし哀しみに閉じこもるくまの物語。
第40回講談社出版文化賞絵本賞を受賞。
2009年版国内絵本「この絵本が好き!」第1位、第1回MOE絵本屋さん大賞第1位に輝き、アメリカの老舗書評誌「カーカス・レビュー」“会話のきっかけ作りにうってつけな最高の絵本2023”に選出され、アメリカ、フランス、ドイツ、ブラジル、中国など各国で親しまれている。
本のみどころ
ある朝、なかよしのことりが死んでしまって・・・。物語はちょっとショッキングな出来事で始まります。くまは泣きながら木箱を作り、花をしきつめ、ことりをそっといれます。
大事なものを失くしてしまう、という感覚は、誰の身にも起こりうる事だけど、その心の痛みを代わってあげるということは決してできません。例え、それが小さな心の持ち主であろうと。
くまが箱の中のことりを見せる度に、周りの動物達はとまどう。そして忘れて乗り越えるように諭します。このやりとりには、心を締め付けられるようです。
でも、ここで話は終わりません。ある日、くまは外がいいお天気なのに気がつくのです!そして、小さいけれど大切な出会いをしていくのです。心の再生に合わせるかのように、景色にも色がついていき・・・。テーマは大きくても、子ども達に向けて優しく描かれている「死」についてのお話です。
酒井駒子さんの心のこもった絵と合わさると、読み終えた後、音楽を聴き終わった様な、静かな感動を覚えます。絵本を通して、「時間と音楽」が、こんなに尊くて素晴らしいものだと気がつかせてくれます。こんな体験はなかなか出来ないと思います。湯本香樹実さんと酒井駒子さんの夢のコラボレーションです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
出版社からの内容紹介
くまとやまねこ | 湯本 香樹実,酒井 駒子 | 数ページ読める | 絵本ナビ:レビュー・通販 (ehonnavi.net)