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ゆりやんレトリィバァ Netflix「極悪女王」ざまーみろ!を叫ぶ

怖くすることって大変かも。

ダンプ松本役のゆりあんダンプ松本が誕生した時の豹変ぶりはすごい。

 

 

Netflixの新シリーズ「極悪女王」が、9月19日に配信を開始する(全5話)。1980年代に巻き起こった空前の女子プロレスブームを題材に、気の優しい少女が“最恐ヒール”となっていく過程を描くのが本作のメインストリームだ。そして、そんな悪役ダンプ松本と、圧倒的なスター性をもってブームを牽引した長与千種ライオネス飛鳥からなるクラッシュ・ギャルズとの知られざる友情を描いた青春ストーリーでもある。

 

当時、ダンプ松本クラッシュ・ギャルズが所属する“全女”こと「全日本女子プロレス」の試合は、今でいう地上波のゴールデンタイムに放送されていた。リアルタイムで観ていた人の中には、リング上で悪行の限りを尽くすダンプ松本に対し、本気で怒りや憎しみを抱いていた人も多いだろう。だからこそ、血だらけになりながらもダンプに立ち向かうクラッシュ・ギャルズの姿に心から酔いしれ、熱狂したのだ。

 

周囲の大人たちに翻弄されながら、女子プロレスラーとして、また、ひとりの女性として、自分の進む道を模索する彼女たちの姿を懐かしく感じる人も多いだろうが、その姿はきっとZ世代にも共感を呼ぶはずだ。

主役となるダンプ松本こと松本香を演じたのは、芸人のゆりやんレトリィバァ(以下ゆりやん)。普段は謙虚で物腰のやわらかい彼女が、その真反対となる極悪キャラクター、ダンプ松本を演じようと思った理由は、心優しい女の子、松本香がヒール役の女子プロレスラーになる道筋から丁寧に描かれているからだった。

 

実はゆりやんには、ダンプ松本役のオーディションを受けるにあたって、ひとつの葛藤があった。もし自分が演じるとなれば、役作りのために、当時のダンプ松本の大きなカラダに近づけなければならない。奇しくもオーディションが行われたのは、ゆりやんがおよそ3年かけて45kgの減量に成功し、110kgあった体重を65kgまで落とした直後だった。

 

「健康面のことも踏まえて、めっちゃ考えた末に一度マネージャーさんに、『私にはできないかもしれない』と言ったんです。でも、ちゃんと鍛えながら増量することで、ダンプさんのカラダに近い、カッコいい肉体が作れるかもしれないと思い直して、周囲に相談してみました。その結果、健康面なども全面的にバックアップしてもらえることになり、オーディションを経てダンプ松本さんの役をいただけたんです」

カラダ作りはもちろんだが、内面的にもダンプ松本になるのは簡単ではないはずだ。どのような過程を経て、ヒールキャラが完成したのだろうか?

 

「ダンプさんになろうとか、怖い感じにしようとかではなく、白石和彌監督がつくり出してくれた世界観やセットなどがリアル過ぎて、ダンプさんと同じような感情が自分の中から湧き出てきたんです。劇中の松本香さんと一緒に自分もどんどんダンプさんに近づけたような気がしました」

ダンプ松本から直々に竹刀の振り方や歩き方を教えてもらったと話すゆりやん。温厚そうに見えて実は時々ブチギレたりすることもあるそうで、本人は悪役として振る舞えることを密かに楽しみにしていた。

 

「でも人を竹刀でど突き回したり、大声で罵倒したりは私生活でもしたことがありません。ダンプさんは『遠慮したらダメだよ、もっと怖くやらなくちゃ』って言ってくれたんですが、なかなか思うようにできなかったんです。最初は、ここを叩いて、次はこうやって、みたいに段取り通りに練習しちゃってました。それでも撮影が進むごとに暴れることがだんだん気持ちよくなってきて、ある時、試合の撮影で、客席から帰れコールを浴びたり、モノが飛んできたりした時に、『うるせーっ! 黙れーっ!』って叫んだら、自分の殻が破れたような感じがしました。そこからは自分を解放してヒールとして自由に振る舞えるようになったんです」

 

そして、ゆりやんは名セリフ「ざまーみろ!」を心の底から叫べるようになる。

「このひと言ほどダンプさんの心情を表している言葉はないと思うんです。『どいつもこいつも馬鹿にしやがって!』という気持ちで、お父さん、お母さん、お客さん、千種、世間など、周りのすべてに対して怒りをぶつけていたと思います。私にとっては、力の限り大きな声で、『ざまーみろ!』って叫ぶこと自体がめっちゃ楽しかった(笑)」

 

こうして役になりきったからこそ、撮影中、心情的に苦しい時期もあった。

 

「今回、共演したみなさんとは、撮影が始まる前からトレーニングなどを一緒にやっていくうちに部活のように仲良くなったんです。特に長与千種さん役の唐田えりかちゃんとはめっちゃ親友になれて。でも撮影が始まって、ダンプと千種がちょっとしたすれ違いをきっかけに険悪になっていく時には、唐田さんと話し合って、いい演技をするために私生活でも話すことをやめたんです」

ダンプ松本本人からも「戦う相手とは話さないほうがいい」と助言されたこともあり、しばらく口をきくことがなくなった。

「仲が良かったのに急に目も合わせられなくなったり、『私とは喋らへんのにほかのみんなとは楽しそうに話していて腹立つ!』みたいになってきて。気づいたら当時のダンプ松本さんと長与千種さんの関係性に近い感情が芽生えていました。この時は精神的にめっちゃ苦しかったですね」

 

「何百人ものお客さんに囲まれて、タイムスリップしてダンプさんたちの試合をみんなで体験したかのような不思議なことも起きました。当時いがみあっていたダンプさん、長与さんのご両人も現場に来て、『あの時のままだね』と言ってくださって。最後は私たちの試合を通して当時を思い出したのか、ハグまでされていたことに感動しました!」

実際、試合の撮影では、本作に登場する女子プロレスラーの本人たちが同窓会のように集結。さらに当時のクラッシュ・ギャルズの親衛隊がエキストラとして声援を送ったこともあって、当時のプロレス会場の熱気が見事に再現されている。

ところで、物語のクライマックスには、思いもよらない展開が待っている。

「最後は青春そのもの。あのような結末になって本当によかったと心から思いました」

 

稀代の極悪レスラー、ダンプ松本。日本中から嫌われた彼女の身に待ち受ける運命やいかに……?

 

<あらすじ>
不遇な幼少期を過ごした松本香(ゆりやんレトリィバァ)は、高校卒業後、憧れの全日女子プロレスに入門。同期が次々とデビューを果たす中、プロテストに落ち続ける。やがて親友の長与千種唐田えりか)がライオネス飛鳥剛力彩芽)とクラッシュ・ギャルズを結成し、スターへの階段を駆け上っていく。一方、香はあることをきっかけにダンプ松本として覚醒。ダンプ松本としてクラッシュ・ギャルズの前に立ちはだかり、最恐ヒールとして極悪非道の限りを尽くしていくが……。

 

 

引用記事:

Netflixシリーズ「極悪女王」に傑作の予感! なぜ“全女”に日本中が熱狂したのか?──ゆりやんレトリィバァ「ざまーみろ!って叫ぶこと自体がめっちゃ楽しかった(笑)」 | GQ JAPAN